青空文庫とは、著作権の切れた日本語の本を無料で公開しているウェブサイトです。読者は登録をせずに、その場で本を読めます。
読者が読める作品には、夏目漱石の『坊っちゃん』、芥川龍之介の『羅生門』、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』などがあります。
青空文庫は2026年8月の時点で17,837作品を収録しています1。
一方、「無料で全文が読めると聞くと、違法なサイトなのではないか」と不安に思う方もいるでしょう。
また、作品を自分のサイトやアプリで使いたい場合、「どこまで自由に使ってよいのか」という点についても確認する必要があります。
本記事では、青空文庫で読める作品と読めない作品について解説した上で、読み方、運営の仕組み、再配布の条件、そしてファイルを自分で扱う場合の形式を紹介します。
青空文庫とはどのようなウェブサイトか
本章では、青空文庫の成り立ちについて以下の項目を解説します。
- 青空文庫は建物も紙の本も持たない
- 青空文庫の作品が無料で読める理由
- 青空文庫と海賊版のサイトは仕組みが異なる
以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
青空文庫は建物も紙の本も持たない
「文庫」という名前が付いていますが、青空文庫は建物を持ちません。紙の本もありません。
青空文庫は、ボランティアが本を1冊ずつ手で入力したデータの集まりです。
青空文庫は1997年から活動を続けています2。
青空文庫の作品が無料で読める理由
日本の著作権は、書いた人が亡くなった年の翌年から数えて70年で終わります。
保護期間が過ぎた作品には、利用者が許可を求める相手がいません。
そのため、利用者は作品を誰でも自由に複製して配れます。
この状態を、パブリックドメイン(日本語では公有)と呼びます。
青空文庫が公開している作品は、ほとんどがこの状態にあります。
青空文庫と海賊版のサイトは仕組みが異なる
海賊版のサイトと違い、青空文庫には権利の残っていない本だけが並んでいます。
そのため、読者は夏目漱石の作品を読めますが、いま書店に並んでいる小説を青空文庫で読むことはできません。
青空文庫で読める作家と読めない作家
本章では、青空文庫の収録範囲について以下の項目を解説します。
- 没年が古い作家から順に公有になる
- 1968年以降に亡くなった作家の作品は読めない
- 17,837作品のうち488作品は著作権が残っている
没年が古い作家から順に公有になる
青空文庫に収録されている代表的な作家は、以下のとおりです。
| 作家 | 没年 | 青空文庫で読めるもの(例) |
|---|---|---|
| 樋口一葉 | 1896年 | たけくらべ |
| 夏目漱石 | 1916年 | 坊っちゃん、吾輩は猫である、こころ |
| 森鴎外 | 1922年 | 高瀬舟、舞姫 |
| 芥川龍之介 | 1927年 | 羅生門、蜘蛛の糸 |
| 宮沢賢治 | 1933年 | 銀河鉄道の夜、注文の多い料理店 |
| 中島敦 | 1942年 | 山月記、李陵 |
| 横光利一 | 1947年 | 機械、春は馬車に乗って |
| 太宰治 | 1948年 | 走れメロス、人間失格 |
表のとおり、作家が亡くなった年が古いほど、その作品は早く公有になります。
1968年以降に亡くなった作家の作品は読めない
三島由紀夫は1970年に亡くなったため、その作品は2040年の末まで保護されます。川端康成は1972年に亡くなったため、その作品は2042年の末まで保護されます。
読者がこの2人の作品を青空文庫で探しても、見つけることはできません。
境目が1967年と1968年のあいだにある理由は、2018年の法改正にあります。改正の内容と数え方は著作権はいつ切れるのかで解説しています。
17,837作品のうち488作品は著作権が残っている
収録作品の内訳は、以下のとおりです。
- 著作権なし……17,349作品
- 著作権あり(著作権者が公開を許諾したもの)……488作品
後者の488作品については、作者や遺族が利用の条件を決めています。
そのため、利用者が使ってよい範囲は作品ごとに異なります。
利用者がこの488作品を使う場合は、図書カードか作品ファイルに書かれた条件を1作品ずつ確認しましょう。
青空文庫の読み方
青空文庫には、作品ごとに「図書カード」というページがあります。
読者は、このページから読み方を選びます。
読み方は以下の3とおりです。
- **ブラウザでそのまま読む。**図書カードに XHTML 版へのリンクがあります。ルビも振り仮名として表示されます。
- **ファイルをダウンロードする。**図書カードには、テキスト版と XHTML 版の zip が置いてあります。
- **対応したアプリで読む。**青空文庫のファイルを読めるアプリが、iOS と Android のどちらにもあります。
長編を読み通す場合はアプリが向いている
XHTML 版は、1作品まるごとが1ファイルになっています。そのため、読者は途中でしおりを挟めません。
読者が途中でやめると、次に開いたときに冒頭から読んでいた場所を探すことになります。長編を読み通す場合は、対応したアプリを使うほうが向いています。
青空文庫を支えている入力と校正
本章では、青空文庫の運営について以下の項目を解説します。
- 入力と校正は別々の人が担当する
- 青空文庫は担当者を「工作員」と呼ぶ
- 青空文庫を呼びかけた富田倫生
- 青空文庫の運営は寄付とボランティアで続いている
入力と校正は別々の人が担当する
青空文庫の作品は、2つの作業を経て公開されます。
まず、誰かが底本を見ながら本文を打ち込みます。次に、別の誰かが原本と突き合わせて誤りを直します。
青空文庫は担当者を「工作員」と呼ぶ
青空文庫は、入力と校正に参加している人たちを「工作員」と呼びます。
作業の手引きになる「青空文庫工作員マニュアル」は、1997年12月16日にできました。青空文庫は、開設の年のうちに作業の形を決めていました2。
青空文庫を呼びかけた富田倫生
青空文庫の呼びかけ人は、富田倫生です。富田は1952年4月20日に生まれ、2013年8月16日に亡くなりました。
富田は1997年12月30日の日誌に、以下のとおり書いています。
今回著作権切れを迎えた横光利一はもちろん、正岡子規の作品もまだ、テキスト化できていない。工作員としての時間を作れそうになったときには、皆さん、よろしくご検討のほどお願いいたします。
横光利一は、1947年12月30日に亡くなりました。当時の保護期間は死後50年だったため、横光の作品はこの日にちょうど公有になりました。
つまり富田は、保護期間が切れた当日に「まだ誰も入力していません」と呼びかけていたことになります2。
青空文庫の運営は寄付とボランティアで続いている
富田の没後、葬儀の日に集まった数人の相談から「本の未来基金」が生まれました。集まった寄付のうち500万円が、まず青空文庫へ渡っています。
青空文庫の運営は、いまも寄付とボランティアで続いています3。
青空文庫の作品を読むときに知っておきたいこと
本章では、読者が作品を読む際に知っておきたい以下の項目を解説します。
- 収録作品の38.9%は旧仮名で書かれている
- 差別的な表現が書き換えられずに残っている
- 底本がファイルの末尾に明記されている
収録作品の38.9%は旧仮名で書かれている
青空文庫の収録作品のうち、4割近くは旧仮名で書かれています。
内訳は新字旧仮名が4,566件、旧字旧仮名が2,181件で、合計6,747件です。この6,747件は、収録作品全体の38.9%にあたります。
読者が「言つた」「てふてふ」のような表記に慣れていないと、これらの作品は読みにくく感じます。読者が読みやすさを優先する場合は、新字新仮名の作品を選びましょう。
表記の種類は、作品ごとの図書カードに「新字新仮名」「新字旧仮名」と書かれています4。
差別的な表現が書き換えられずに残っている
百年前の小説には、現在なら差別と受け取られる言葉がそのまま入っています。
青空文庫はこれらの言葉を書き換えずに公開する方針を取っており、作品によっては注記を付けています。注記が付いている作品は4,634作品で、全体の26.7%にあたります。
『吾輩は猫である』『おくのほそ道』『源氏物語』も、この中に含まれます4。
底本がファイルの末尾に明記されている
青空文庫のファイルには、工作員がどの出版社のどの版から入力したかが、末尾に書かれています。
読者や利用者が作品を引用する場合は、この底本の記載を確認しましょう。
青空文庫の作品を再配布するときの条件
本章では、利用者が作品を配り直す場合の条件を解説します。
著作権の切れた作品は複製も再配布も自由にできる
青空文庫は、著作権の切れた作品について、取り扱い基準に以下のとおり書いています。
ファイルは、有償・無償であるかを問わず、自由に複製・再配布・共有することができます。
利用者は、実演や口述、翻案も自由に行えます。出典の表示について、青空文庫は「これらの情報が削除されないことを希望します」という書き方をしており、義務にはしていません5。
著作権者が許諾した488作品は条件が作品ごとに異なる
一方、著作権者が公開を許諾した488作品については、条件が作品ごとに違います。
これらの条件は図書カードか作品ファイルに書かれています。利用者は、1作品ずつ読んで確認しましょう。
ここから先は、青空文庫のファイルを自分のプログラムで扱う人に向けた内容です。読者が本を読むだけであれば、ここで読み終えて構いません。
青空文庫の原本にあたるテキスト版
図書カードにはテキスト版と XHTML 版が並びますが、原本はテキスト版のほうです。
工作員は、テキスト版だけを手で作ります。XHTML 版は、青空文庫がテキスト版から機械で変換したものです。
青空文庫は、注記一覧に以下のとおり書いています。
青空文庫では、テキスト版をプログラムで変換して、XHTML 版を作っています。そのプログラムは、ここにまとめた書き方を前提に動作します。
つまり、青空文庫で表現できる範囲は、テキスト版の書き方までです6。
青空文庫の注記は3種類を覚えれば足りる
青空文庫の記法は、以下の3つを覚えれば大半に対応できます。
- **ルビ。**工作員は
羅生門《らしょうもん》のように、親文字のうしろに《》で付けます。 - **ルビの始点。**工作員は、どこからルビが掛かるかを示したいときに
|で始まりを指定します。 - **その他の指示。**工作員は、それ以外の指示をすべて
[#と]で囲みます。[#改ページ][#「あれ」に傍点]のような形です。
青空文庫の注記一覧には、字下げ、見出しのレベル、返り点、傍点、キャプションまで並んでいます。これらは、縦組みの本の組み方を平文の中に残すための決まりです6。
青空文庫の外字は JIS X 0213 の面区点で書かれている
常用漢字の範囲に入らない字を、青空文庫は JIS X 0213 の面区点で指定しています。XHTML 版では、この指定が画像の alt 属性に入ります。
利用者は、alt 属性の値から Unicode を検索できます。対応表のキーは 3-746D のような形です。
キーの構成は以下のとおりです。面1が 3-、面2が 4- にあたり、区点にそれぞれ 0x20 を足して16進2桁ずつ並べたものになっています。
alt の末尾には、底本のどのページの字かという参照(88-上-7 など)が付いてきます。処理が末尾から数字を探すと、このページ番号を面区点として読んでしまいます。
yodaka は「第N水準」という語を先に探す処理へ変えて、この問題を直しました。面区点を持たない欧文のアクセント付き文字は、※(アキュートアクセント付きA小文字) という名前から構成しています。
yodaka はこの方法で、17,342作品の外字をすべて Unicode に変換できました4。
古い形式のファイルが142件残っている
青空文庫のファイル形式は、25年以上のあいだに変わってきました。yodaka では2026年7月31日に全作品を処理しており、そのとき見つかった例外を2つ紹介します4。
.main_text を持たない古い形式が142件ある
1つめは、本文の目印である .main_text を持たない古い形式のファイルです。青空文庫には、この形式が142件(0.8%)残っています。
これらのファイルでは、ルビが <!R>帯(さ) という形になっています。外字は末尾の対照表へのリンクになっており、傍点は [#「あれ」に傍点] が本文中に残ったままです。
142件のうち59件に、この傍点注記が出てきました。yodaka は形式を揃えてから、同じ処理へ渡しています。
.main_text が本文の手前で閉じるファイルが53件ある
2つめのほうが、利用者にとって見つけにくい例外です。.main_text が本文の手前で閉じてしまうファイルが53件(0.3%)あります。
これらのファイルでは、冒頭の題辞や凡例の直後に </div> が来て、本文が .main_text の外へ出ています。yodaka がこの53件を素通りさせていたあいだ、処理は以下の作品を取りこぼしていました。
| 作品 | 取りこぼしていた分量 |
|---|---|
| 島崎藤村『夜明け前』3分冊 | 計46万字 |
| 浜尾四郎『殺人鬼』 | 27万字 |
| 中里介山『大菩薩峠』 | 全編 |
| 押川春浪『海底軍艦』 | 全編 |
| 太宰治『犯人』 | 8,150字(91字だと思っていました) |
yodaka がこの問題に気づいたきっかけは、作品ごとの字数を並べて見たときでした。利用者が1作品ずつ表示を確かめても、この取りこぼしは分かりません。
全17,342件のうち17,340件を処理できた
yodaka が最後まで処理できなかった作品は2件です。内訳は、本文のない作品と、外部サイトが応答しない源氏物語でした。
処理した結果は1作品あたり平均47KB、全部で790MBになります。
この大きさは、アプリに同梱できる規模を超えています。そのため yodaka は、索引だけを内蔵して本文は配信で取得しています4。
まとめ
青空文庫とは、著作権の切れた日本語の本を無料で公開しているウェブサイトです。読者は登録をせずに、17,837作品をその場で読めます。
読者は、1967年までに亡くなった作家の作品を読めます。1968年以降に亡くなった作家の作品は、まだ保護期間が終わっていません。
また、青空文庫の作品は、ボランティアが1冊ずつ手で入力して校正したデータです。著作権の切れた作品であれば、利用者は有償・無償を問わず自由に複製・再配布できます。
なお、収録作品の38.9%は旧仮名で書かれており、差別的な表現も書き換えられずに残っています。読者は、この点を知った上で作品を選びましょう。
この記事が、青空文庫についての理解を深める一助になれば幸いです。
Footnotes
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青空文庫トップページの「収録作品数:17837(著作権なし:17349、著作権あり:488)」。2026年8月11日に確認しました。 ↩
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青空文庫「1997年のそらもよう」。日誌の最初の記事は1997年2月20日、工作員マニュアルの完成は同年12月16日の記事にあります。引用した12月30日の記事の署名は「(倫)」です。 ↩ ↩2 ↩3
-
青空文庫「2013年のそらもよう」の12月31日「富田さんを送った年だった」。生没年は作家別作品リスト:富田 倫生によります。 ↩
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件数・外字・旧形式のファイル数は、yodaka の取り込み処理で2026年7月31日に全作品を通して測った値です。同じ間隔で作品を抜き出しているので、同じコマンドで取り直せます。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
青空文庫「青空文庫収録ファイルの取り扱い基準」。 ↩
